またカエッてきてね!夏期限定の仲間の話。 シリーズ「mizutori」とは... 【第七十一話】

またカエッてきてね!夏期限定の仲間の話。 シリーズ「mizutori」とは... 【第七十一話】

第七十一話 またカエッてきてね!夏期限定の仲間の話。 水鳥工業には、夏になると現れる「仲間」がいます。 もう3、4年になるでしょうか。 少し暑くなってきた頃、工場の庭にある小さな祠をのぞくと、 お供えしてある榊の葉に、一匹のカエルがちょこんとくっついています。 白っぽい薄いグレーに、明るい緑色のまだら模様。 ニホンアマガエルのように見えます。 アマガエルは、周りの環境などによって体の色を変えることもあるそうです。 そう思って見ると、 祠や榊の中に溶け込んでいる姿も、神秘的です。 最初に見つけた時は、 たまたまここにやってきたのだろうと思っていました。 ところが、夏の間は、わりと頻繁に姿を見かけ、 翌年も、その次の年も、 暑くなってくるとまたひょこっと現れるのです。 この小さな祠に祀られているのは、 「地の神様」です。 実は水鳥工業には、 大神様、お稲荷様、火の神様、地の神様、工場の神様、恵比寿様、大黒様など、 いろいろな神様が祀られています。 なぜこんなにいらっしゃるのかというと、 先々代が神棚やお札など、そういったものが好きな人だったから、 というのが一番の理由です。 とはいえ、 お迎えしたからには、 きちんとしなくてはなりません。 毎朝お水を替え、 毎月一日には、塩と生米、榊をお供えして、 日々の感謝と祈りを捧げています。...
mizutoriを支える「好き」のバトン。  シリーズ「mizutori」とは... 【第七十話】

mizutoriを支える「好き」のバトン。  シリーズ「mizutori」とは... 【第七十話】

第七十話 mizutoriを支える「好き」のバトン。 来年、 水鳥工業は創業90年を迎えます。 今のmizutoriの下駄をつくり始めてからも、 30年以上が経ちました。 でも、 まだまだmizutoriを知らない方の方が、 圧倒的に多いというのが現実です。 静岡の小さな町工場ですから、 それも当然なのかもしれません。 それでも、 世界中の方にもっと下駄を知っていただきたい、 という目標がある中で、 より多くの方にmizutoriを知っていただくには どうしたらいいのだろう。 そんなことをよく考えます。 そもそも下駄は、 誰もが興味を持つ というような商品ではありません。 「下駄」というだけで、 自分には関係ないものとして、 最初から選択肢に入らない方もたくさんいるでしょう。 下駄だからなのかな。 これが、 「靴」 だったら違うのかな。 そんなことを考えることもあります。 これまで、 催事で販売している時に、...
父がくれた宿題。シリーズ「mizutori」とは... 【第六十九話】

父がくれた宿題。シリーズ「mizutori」とは... 【第六十九話】

第六十九話 父がくれた宿題。 「世界中の方にもっとげたを知ってほしい。」 父である先代が、よく口にしていた言葉です。 その言葉を聞くうちに、 私の中にも、 この静岡から世界中の方々に、 下駄を知っていただきたいという思いが強くなっていきました。 でも、 いざ海外へ広げることを考えると、なかなかすんなりとはいきません。 日本人でも足の形はさまざま。 履き心地の好みも違えば、 木の履物にまったく興味のない方もいます。 それが海外となれば、 もっと大きなサイズが必要かもしれない。 道路の状況も、気候も違う。 お手入れの方法も、 もっとわかりやすくお伝えする必要があるでしょう。 「海外の展示会に出てみたら?」 そう言ってくださる方もいます。 もちろん、興味はあります。 でも、 知っていただくことだけを考えて動けばいいわけでもありません。 mizutoriの下駄は、 たくさんご注文いただけば、 一足にかける手間を減らせるというものではありません。 一足ずつ、 人の手でつくることに変わりはないからです。 もし海外でも興味を持ってくださる方が増え、 ご注文をいただけるようになった時、...
なぜ、わざわざ木なの?  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十八話】

なぜ、わざわざ木なの?  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十八話】

第六十八話なぜ、わざわざ木なの? 「これは、mizutoriが作らなくてもいいよね。」 以前、 あるお取引先の方からそう問いかけていただいたことがあります。 mizutoriの商品は、 自然素材である木を使い、 一つひとつ手作業で仕上げています。 どうしても手間がかかる分、 価格の面で購入をためらわれる方がいらっしゃるのも事実です。 もっと手に取りやすい商品をつくれないだろうか。 そう考えて、 木を使わない履物を試作したことがありました。 冒頭の言葉は、 その試作品をご覧になった方からのものでした。 その方にとって、 mizutoriは、 「木の履物をつくる会社」 だったのだと思います。 木を使わない履物なら、 世の中にたくさんある。 そこにmizutoriがあえて参入する必要はない。 そんな意味が込められた言葉だったのだと、 私は受け取りました。 その言葉をきっかけに、 改めて考えました。 私たちはなぜ、 木にこだわってきたのだろう。 確かに、 今は木よりも加工しやすく、 形や色の自由度が高い素材もたくさんあります。...
社長、予想を外す…。  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十七話】

社長、予想を外す…。  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十七話】

第六十七話 社長、予想を外す…。 今、mizutoriでは、 来年1月に発表する新作の鼻緒を選んでいます。 毎年この時期になると、 企画担当を中心に、さまざまな生地を集めます。 幅広い方に選んでいただけるよう、 色も、柄も、素材も、 できるだけいろいろな方向から。 私も気になる生地を見つけると、 取り寄せて提案します。 私はもともと、 伝統産業の織物や染め物が好きなので、 どうしても、そちら方面から探し始めます。 こうして長年、生地を探し続けているのに、 「まだこんなものがあったんだ。」 と驚かされることがあります。 日本にはまだまだ、 素晴らしい技術や発想から生まれた魅力的な生地がたくさんあります。 ただ、 どんなに素敵な生地でも、 鼻緒に使える面積はほんのわずか。 大きな柄などは、 生地では素敵なのに、鼻緒にすると魅力が伝わらない。 そんなこともあります。 それでも、 「これは面白い!」 という生地に出会った時は、 やっぱりワクワクします。 そして、...
0.5cmで迷ったら?  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十六話】

0.5cmで迷ったら?  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十六話】

第六十六話 0.5cmで迷ったら? 「MとL、私にはどちらがいいですか?」 サイズ選びに迷われたお客様から、よくこんな質問をいただきます。 例えば、 足長が24cmくらいの方。 hiteteシリーズなら、 下駄台の実寸23.5cmのMと、24.5cmのL。 どちらを選んでも、その差はたった0.5cmです。 「大は小を兼ねるから、Lの方がいいかな。」 という方もいれば、 「下駄はかかとが少し出るくらいがいいんですよね?」 と、Mを選ぼうとする方もいらっしゃいます。 そんな時、 私はいつも、 「一度、履いて歩いてみてください。」 とお伝えします。 そして、 「歩いた時に、下駄台が足にくっついてくるように感じる方がおすすめですよ。」 と。 実際に歩き比べていただくと、 「ああ、なるほど。」 と納得される方がほとんどです。 mizutoriの下駄は、 一部の子ども用とスリッパ系を除いて、1cm間隔でサイズをご用意しています。 木を一つひとつ加工することを考えれば、 もっと大まかなサイズ展開の方が、つくる側としては楽です。 在庫の管理だって、その方がずっと簡単です。 それでも1cm刻みにしているのは、 できるだけご自身の足長に合ったものを選んでいただきたいからです。...
突然お客様に謝られた日のお話...  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十五話】

突然お客様に謝られた日のお話... シリーズ「mizutori」とは... 【第六十五話】

第六十五話 突然お客様に謝られた日のお話...   先日、 縁JOYにいたときのこと、 一人の女性が、 店の前にサッと自転車を止めると、店内に入ってこられました。 そして、 あれこれと商品を手に取りながら、とても熱心にご覧になっていました。 何か特定のものを探していらっしゃるようにも見えたので、 私からお声がけすると、 そこから何気ない会話が始まりました。 現在もmizutoriの下駄を愛用してくださっていて、 新しい鼻緒の柄をいろいろ見てみたかったとのこと。 そして、 8月に本社工場で開催している「げたのみずとり大感謝まつり」に行くので、 そこで購入できればと話してくださいました。 「げたのみずとり大感謝まつり」は、 小さな傷などで正規品として販売できなくなった商品や、 試作品などを工場で販売する毎年恒例のイベントです。 「それは、ありがとうございます!」 と私が言うと、 なぜか少し気まずそうな表情になり、 「すみません。」 とおっしゃったのです。 「えっ?」 何を謝られているのかわかりませんでした。 すると、 「地場産業や伝統工芸が続いていくためには、 正規の価格で買うべきだということはわかっているんです。」...
下駄じゃない何か。  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十四話】

下駄じゃない何か。  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十四話】

第六十四話 下駄じゃない何か。 「下駄じゃない何か。」 この言葉が、 随分前から時々、私の頭の中に浮かびます。 下駄屋なのに、 下駄じゃない何か。 なんだかおかしな話ですよね。 でも、 水鳥工業のこれまでを振り返ると、 実はそれほど不思議なことでもないのです。 水鳥工業はもともと、 下駄の木地を加工する仕事から始まりました。 その後、 時代の変化とともに、 サンダルやシューズの中底加工へ。 そして現在は、 mizutoriの下駄を製造、販売しています。 ずっと履物に関わってはいますが、 その時代、その時代で、 自分たちにできることを探しながら、 少しずつ仕事の形を変えてきた会社なのです。 世の中が変われば、 人が必要とするものも変わっていきます。 だから私も、 今の仕事を続けながら、 いつもその先のことを考えています。 mizutoriが今の形の下駄をつくり始めてから、 三十年以上が経ちました。 ありがたいことに、...
「本当に手作りなんですね?」   シリーズ「mizutori」とは... 【第六十三話】

「本当に手作りなんですね?」   シリーズ「mizutori」とは... 【第六十三話】

第六十三話 「本当に手作りなんですね?」 工場へ来られたお客様から、 よくこんな言葉をいただきます。 「本当に手作りなんですね。」 そして、もう一つ。 「この人数でやられているんですか?」 初めて聞いた頃は、 その言葉をどう受け止めたらいいのか、正直わかりませんでした。 もしかしたら、 「思っていたより小さな会社なんですね。」 そんな意味なのではないかと、 少し不安になっていたのです。 mizutoriの商品やウェブサイトをご覧になって、 もっと大きな会社を想像されている方が多いのも事実です。 設備の整った工場で、 かなり機械化も進んでいると思われる方も少なくありません。 でも実際は、 築年数を重ねた工場を、必要に応じて少しずつ増築し、 実家と同じ敷地の中で、 住宅街に囲まれながらものづくりを続けています。 最近ようやく看板を付けましたが、 それまでは、 初めて来られるお客様の多くがそのまま通り過ぎてしまうほど、 目立たない工場でした。 特に都会からお越しになる方には、 「期待外れと思っていらっしゃらないかな。」 そんなことを、 いつも少し気にしていました。 工場見学といっても、...
夏祭りの密かな楽しみとは――。   シリーズ「mizutori」とは... 【第六十二話】

夏祭りの密かな楽しみとは――。   シリーズ「mizutori」とは... 【第六十二話】

第六十二話 夏祭りの密かな楽しみとは――。 夏になると、 花火大会や町内のお祭り、 商店街の夜店市など、 あちらこちらで夏のイベントが開かれます。 浴衣や甚平でお出かけされる方も多い季節ですね。 皆さんは、 そんな時の足もとは何を履かれていますか。 せっかくのイベントだからと張り切って下駄を履く方、 または、楽しいお出かけの途中で足が痛くならないようにできるだけ楽なサンダルを履く方、 それぞれの楽しみ方に合わせて、 履物を選ばれているのではないでしょうか。 私はというと、 特別な日だから下駄を履くという感覚はあまりありません。 普段からほとんど毎日、下駄で過ごしているので、 お祭りの日も、いつも通り下駄で出かけます。 でも、 そんな夏のイベントには、 私だけの密かな楽しみがあります。 それは、 mizutoriの下駄を履いてくださっている方を見つけること。 夏祭りの日は、 普段よりずっと多くの方が下駄を履かれています。 私たちがつくった下駄を、 どんな装いに合わせてくださっているのか。 どんな表情で歩いてくださっているのか。 そんな姿を見られることも、夏の楽しみの一つです。 最近では、 浴衣に厚底サンダルやスニーカーを合わせる方も増えました。...
「mizutori」って、どんな意味?  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十一話】

「mizutori」って、どんな意味?  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十一話】

第六十一話 「mizutori」って、どんな意味? 店頭に立っていると 時々こんなご質問をいただきます。 「mizutoriって、どんな意味でつけたんですか?」 意味も何も、 私の名字なんです。 そうお話しすると、 「えっ、そうなんですか!」 と驚かれる方が少なくありません。 今では「mizutori」という名前も少しずつ知っていただけるようになりましたが、 実は最初からブランド名として考えていたわけではありません。 下駄づくりを始めた頃、 当時の水鳥工業は、サンダルやシューズの中底をつくる仕事が中心でした。 そこで、下駄部門を分けるためにつけた名前が、 「和工房みずとり」 でした。 それから年月が経ち、 「日本だけでなく、世界にも下駄を広めたい。」 そんな思いが少しずつ強くなり、 その時にブランド名として選んだのが、 アルファベットの 「mizutori」 です。   「水鳥」という名字は、全国的にあまり多くありません。 ですから、名字から付けていると気づかないお客様も多いのです。 静岡でも珍しい名字ですが、 もともとは岐阜県の地名に由来すると言われていて、 岐阜や愛知には比較的多いそうです。...
日本を離れる前に、もう一度。  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十話】

日本を離れる前に、もう一度。  シリーズ「mizutori」とは... 【第六十話】

第六十話 日本を離れる前に、もう一度。 このところ、専務が静岡の浅間神社近くに開いているお店(縁JOY)にも外国人観光客のご来店が増えています。 このお店でもmizutoriの下駄を取り扱っているのですが、海外のお客様を接客していると、反応がとても率直で面白いです。 mizutoriの下駄を見て、 「No.」 とはっきりおっしゃる方もいれば、 履いてみた瞬間、 「Wow! Beautiful!」 「Amazing!」 と目を輝かせる方もいます。 そんな素直な反応に、私たちも日々たくさんのことを教えていただいています。 その中でも最近、忘れられないスイスのご夫婦との出会いがありました。 奥様がショーウィンドウの下駄の前で足を止められ、 そのまま店内へ入って来られました。 扉を開け、店内いっぱいに並ぶ下駄を前に、 ぱっと表情が明るくなり、 目をキラキラとさせているのが、離れていても伝わってきました。 「どれがいいと思う?」 そう言って奥様は、店内を見渡しながらご主人に話しかけていらっしゃいました。 やがて、 私にも、 そして、たまたま店内にいらしたお客様にも、 気さくに尋ねていらっしゃいました。 「私は普段、ピンク系の服が多いの。」 「だったら、こっちの方が合うかしら。」 鏡の前で履き比べながら、何足も手に取っては楽しそうに悩まれています。 すると、 いつの間にか店内のお客様も自然と会話に加わり、...