第六十五話
突然お客様に謝られた日のお話...
先日、
縁JOYにいたときのこと、
一人の女性が、
店の前にサッと自転車を止めると、
店内に入ってこられました。
そして、
あれこれと商品を手に取りながら、
とても熱心にご覧になっていました。
何か特定のものを
探していらっしゃるようにも見えたので、
私からお声がけすると、
そこから何気ない会話が
始まりました。
現在もmizutoriの下駄を
愛用してくださっていて、
新しい鼻緒の柄を
いろいろ見てみたかったとのこと。
そして、
8月に本社工場で開催している
「げたのみずとり大感謝まつり」に行くので、
そこで購入できればと
話してくださいました。
「げたのみずとり大感謝まつり」は、
小さな傷などで
正規品として販売できなくなった商品や、
試作品などを
工場で販売する毎年恒例のイベントです。
「それは、ありがとうございます!」
と私が言うと、
なぜか少し
気まずそうな表情になり、
「すみません。」
とおっしゃったのです。
「えっ?」
何を謝られているのか
わかりませんでした。
すると、
「地場産業や伝統工芸が
続いていくためには、
正規の価格で買うべきだということは
わかっているんです。」
そして、
「いつか、こういうお店で
ちゃんと買えるようになります。」
と。
今履いているmizutoriも、
実はUSED品を扱うサイトで
購入したものだと、
正直に話してくださいました。
私は驚きました。
と同時に、
とても嬉しくなりました。
一足の下駄を選ぶ時に、
その向こうにいる
作り手のことや、
地場産業のこれからにまで
思いを寄せてくださっている。
その気持ちが、
何より嬉しかったのです。
私は、
彼女にこうお伝えしました。
「大感謝まつりで
買ってくださることも、
私たちは
とても嬉しいんですよ。」
もちろん、
商品の価値や
適正な販売価格を守ることは、
私たちにとって
とても大切なことです。
材料の調達から
最後の出荷まで、
一人一人が細心の注意を払い、
一足を仕上げています。
それでも、
木という自然素材を扱っていると、
どうしても小さな傷などが
生じることがあります。
そんな下駄たちを
捨てることなく、
誰かに気に入っていただき、
喜んで履いてもらえる。
それも作り手にとっては
とても嬉しいことなのです。
もともと、
工場周辺の皆さんへ
日頃の感謝を伝え、
近所にある下駄工場を
知っていただくきっかけになれば。
そんな思いから始まったのが、
「げたのみずとり大感謝まつり」です。
最初は、
地元でひっそりと行っていた
小さなイベントでした。
それが少しずつ知っていただけるようになり、
今では遠方から
毎年楽しみに来てくださる方もいます。
当日は、
開発途中で生まれた試作品や、
以前、限定販売した商品などが
並ぶこともあります。
珍しい商品を前に、
「これは何ですか?」
と興味を持っていただく方も多く、
開発の裏話をお話しすると、
楽しそうに聞いてくださったり、
時には思いがけないアイデアを
いただいたりすることもあります。
そんなお客様とのやりとりは、
作り手である私たちにとっても
とても刺激的で、
大感謝まつりの
楽しみの一つになっています。
いつかは、
ここでしか出会えない商品を披露したり、
お客様と意見を交わしながら
一緒にものづくりをしたり。
もっと皆さんと楽しめる場所、
本当の意味での「大感謝まつり」へと
このイベントを育てていけたらと思っています。
そして先週末、
「げたのみずとり大感謝まつり」の初日、
開店前に並んでくださったお客様の中に、
あの日お店でお話しした
彼女の姿がありました。
「本当に来てくださったんだ。」
そう思うと、
なんだかとても
嬉しくなりました。
将来、
大感謝まつりが
もっと皆さんと一緒に楽しめる場所になった時、
彼女ともまた、
下駄の話だけでなく、
地場産業のこれからについて、
もう少しゆっくり
話してみたいなと思っています。
そして今週末、
8月29日、30日にも、
「げたのみずとり大感謝まつり」を開催します。
毎回、
mizutoriの下駄を履いて
来てくださる方も多く、
皆さんがどんなふうに
コーディネートしてくださっているのかを見るのも、
私たちの密かな楽しみです。
次は、
どんな方と出会い、
どんなお話ができるでしょう。
今からとても楽しみにしています。













