第六十三話

「本当に手作りなんですね?」


工場へ来られたお客様から、

よくこんな言葉をいただきます。

「本当に手作りなんですね。」

そして、もう一つ。

「この人数で
やられているんですか?」

初めて聞いた頃は、

その言葉をどう受け止めたらいいのか、
正直わかりませんでした。

もしかしたら、

「思っていたより
小さな会社なんですね。」

そんな意味なのではないかと、

少し不安になっていたのです。

mizutoriの商品や
ウェブサイトをご覧になって、

もっと大きな会社を
想像されている方が
多いのも事実です。

設備の整った工場で、

かなり機械化も
進んでいると思われる方も
少なくありません。

でも実際は、

築年数を重ねた工場を、
必要に応じて少しずつ増築し、

実家と同じ敷地の中で、

住宅街に囲まれながら
ものづくりを続けています。

最近ようやく
看板を付けましたが、

それまでは、

初めて来られるお客様の多くが
そのまま通り過ぎてしまうほど、

目立たない工場でした。

特に都会からお越しになる方には、

「期待外れと思って
いらっしゃらないかな。」

そんなことを、

いつも少し気にしていました。

工場見学といっても、

分業でものづくりをする中で、
水鳥工業で行っているのは主に
最終工程にあたる部分です。

ですから、

三十分もあれば
すべて見終わってしまいます。

もっと大きくて、

もっと見ごたえのある工場を
想像されていたのではないか。

そんなふうに思いながら、

お客様の表情を
そっと見てしまうことも
ありました。

ところが、

見学を終えた皆さんが
おっしゃることは、

私の予想とは
まったく違っていました。

「この丁寧なものづくりこそが、
この商品の価値なんですね。」

「作っているところを見られて、
本当に良かったです。」

毎回そんな温かい言葉を
くださるのです。

最初の頃は、

「きっと気を遣って
言ってくださっているんだろう。」

そう思っていました。

でも、

日本のお客様だけではありません。

時々海外からのお客様も
工場へお越しになります。

そんな皆さんも、

古い工場や、

人の手で一足ずつ
仕上げていく仕事ぶりを見て、

「COOL!」

「I was really impressed!」

と目を輝かせてくださいます。

工場の隣に建つ
瓦屋根の家屋も含めて、

「これが日本らしくて素敵。」

と言ってくださる方も
いらっしゃいました。

私たちにとっては
当たり前の風景でも、

初めて見る方には
とても新鮮に映るようです。

その姿を何度も見ているうちに、

私の考えも
少しずつ変わっていきました。

最新の設備ではないこと。

決して大きな工場ではないこと。

少人数で、

今でも多くの工程が
人の手で行われていること。

私は長い間、

それをどこか
隠したいような気持ちでいました。

でも今は、

それこそが
mizutoriらしさであり、
強みなのかもしれないと
思えるようになりました。

私たちが
当たり前だと思っていた風景の中に、

お客様は
価値を見つけてくださいました。

そのことを、

工場へ足を運んでくださった
皆さんに教えていただきました。

だから私は今、

この小さな工場にも、

誇りを持っています。

そしてこれからも、

この場所から、

一足一足、

大切にお届けしていきたいと思います。