第六十七話

社長、予想を外す…。


今、mizutoriでは、

来年1月に発表する
新作の鼻緒を選んでいます。

毎年この時期になると、

企画担当を中心に、
さまざまな生地を集めます。

幅広い方に選んでいただけるよう、

色も、柄も、素材も、

できるだけいろいろな方向から。

私も気になる生地を見つけると、

取り寄せて提案します。

私はもともと、

伝統産業の織物や染め物が好きなので、

どうしても、
そちら方面から探し始めます。

こうして長年、
生地を探し続けているのに、

「まだこんなものがあったんだ。」

と驚かされることがあります。

日本にはまだまだ、

素晴らしい技術や発想から生まれた
魅力的な生地がたくさんあります。

ただ、

どんなに素敵な生地でも、

鼻緒に使える面積は
ほんのわずか。

大きな柄などは、

生地では素敵なのに、
鼻緒にすると魅力が伝わらない。

そんなこともあります。

それでも、

「これは面白い!」

という生地に出会った時は、

やっぱりワクワクします。

そして、

集めたたくさんの候補から、

実際に商品にする生地を
さらに絞っていきます。

もちろん、

社長の私が選んだ生地だからといって、

採用されるとは限りません。


もう時効だと思うので、

ここで一つ白状します。

今ではmizutoriの看板商品の一つとなった、

hitete6.5
KC-26/畳縁・ターコイズ

実はこの商品、

新作として発表する時、

私は最後まで
色合わせに納得していませんでした。

光沢のある明るいターコイズブルーに、

鮮やかなワインレッド。

比較的シンプルで
合わせやすい色を選びがちな私には、

「絶対に選ばないなぁ。」

という組み合わせでした。

それでも、

企画担当やスタッフの意見を聞き、

「好きな方もいるだろう。」

と、採用することに。

ところが、

発売してみると、

私の予想は
見事に外れました。

それから10年以上。

KC-26は今でも、

毎年人気の1位、2位に
君臨し続けています。

嬉しい。

とても嬉しい。

……のですが、

同時に、

「私のセンスってあてにならないな……。」

と、

少々、自信をなくしたのも
事実です。

でも、

実際にお客様が履かれている姿を見ると、

ターコイズブルーとワインレッドが
合わさることで、

足元がぱっと華やかになり、

肌まできれいに見える気がします。

たくさんの下駄が並んでいても、

自然と手を伸ばしたくなる魅力が
確かにあるのです。

この商品から、

私は一つ教えてもらいました。

自分の好みだけで、

商品の可能性を決めてはいけない。

ということ。

今、新作候補として
集まっている生地の中にも、

私なら選ばないものがあります。

でも、

だからこそ面白い。

自分一人の世界では
出会えなかった感性が加わることで、

思いがけず、

たくさんの方の心に届く一足が
生まれることがあります。

ものづくりは面白い。

予想通りにいかないことも、
また面白い。


さて、

2027年のmizutoriには、

どんな一足が
仲間入りするでしょう。

そして、
果たしてその中に、

私が選んだ生地はあるのでしょうか……。

私自身も、

今から楽しみにしています。