第六十二話

夏祭りの密かな楽しみとは――。


夏になると、

花火大会や町内のお祭り、

商店街の夜店市など、

あちらこちらで
夏のイベントが開かれます。

浴衣や甚平で
お出かけされる方も
多い季節ですね。

皆さんは、

そんな時の足もとは
何を履かれていますか。

せっかくのイベントだからと
張り切って下駄を履く方、

または、楽しいお出かけの途中で
足が痛くならないように
できるだけ楽なサンダルを履く方、

それぞれの楽しみ方に合わせて、

履物を選ばれているのではないでしょうか。


私はというと、

特別な日だから
下駄を履くという感覚は
あまりありません。

普段からほとんど毎日、
下駄で過ごしているので、

お祭りの日も、
いつも通り下駄で出かけます。

でも、

そんな夏のイベントには、

私だけの
密かな楽しみがあります。

それは、

mizutoriの下駄を
履いてくださっている方を見つけること。

夏祭りの日は、

普段よりずっと多くの方が
下駄を履かれています。

私たちがつくった下駄を、

どんな装いに
合わせてくださっているのか。

どんな表情で
歩いてくださっているのか。

そんな姿を見られることも、
夏の楽しみの一つです。

最近では、

浴衣に厚底サンダルや
スニーカーを合わせる方も
増えました。

自由なコーディネートも
素敵だなと思います。

それでもやはり、

浴衣に下駄を合わせた姿を見ると、

「ああ、これぞ日本の夏だ。」

と感じます。

たとえそれが
mizutoriの下駄でなくても、

下駄の音が響き、

浴衣の裾が揺れる風景には、

どこか懐かしく、

心の奥にすっと馴染むような
心地よさがあります。

だから私は、

夏祭りの風景が
昔から大好きです。

そんな風景の中で、

「あっ、
うちの下駄だ。」

そんな瞬間に出会えた時は、

やっぱり特別です。

実は私たち家族、

歩く音で
なんとなくわかるんです。

「あっ、今の音。」

そう思うと、

夫と息子と顔を見合わせ、

みんなでキョロキョロ。

「あの方かな?」

「やっぱりそうだった!」

まるで宝探しをするように、

人混みの中から
mizutoriを探しています。

見つけると、

「帯の色と鼻緒の色がばっちりだね。」

「ネイルも下駄に合わせていて素敵ね。」

そんな会話が
自然と始まります。

花火も夜店も、

もちろん楽しみですが、

私たち家族にとっては、

そんな「mizutori探し」の時間も
夏祭りならではの楽しみなのです。

知らない方が見たら、

少し変わった家族かもしれません。

でも、

自分たちがつくった下駄を、

誰かが大切に履いてくださっている。

その方の

思い出の一ページに、

mizutoriがいる。

そんな場面に出会えるなんて、

これほど嬉しい瞬間は
ありません。

今年の夏、

どこかのお祭りで、

足もとばかり見ながら歩いている
家族がいたら、

それはきっと
私たちです。

もしそこで、

「あっ、mizutori。」

と小さく喜んでいる声が聞こえたら、

皆さんが履いてくださっている一足に、

私たちが元気をいただいた瞬間です。


この夏もまた、

そんな出会いを楽しみにしながら、

夏祭りへ出かけたいと思います。