mizutoriのよみもの
シリーズ「mizutori」とは... 【第二十話】
第二十話見せる工場、つなぐ未来。
日頃よりmizutoriの下駄をご愛顧くださっているお客様の中には、「実際に製造現場を見てみたい」とおっしゃる方が少なくありません。
ものづくりへの興味、足の悩みを職人に直接見てほしいという切実な想い、「せっかく静岡に来たから」と足を運んでくださるお気持ち――お客様の目的は本当にさまざまです。その温かいお気持ちをいただくたび、私たちは大変嬉しく、身が引き締まる思いでおりました。
一方で、長年の課題もありました。私たちの工場は、何十年も前に建てられた古い町工場。もともと来客を想定した造りではないため、お客様が来られる際には急いで片付けをし、なんとか見学スペースをご用意していました。遠方からお越しくださる方もいらっしゃる中で、十分なおもてなしができず、毎回心苦しく思っていたのです。
職人の技が伝える、ものづくりの真価
そんな中でも、ご見学いただいたお客様からは、共通した驚きの声が寄せられます。
mizutoriの工場で行うのは、履き心地の要となる“組み立て工程”。静岡のものづくりは昔から分業制のため、mizutoriの工場ではこの工程がメインです。見学はおよそ30分ほどですが、多くのお客様が「こんなに丁寧に手作業でつくられているなんて!」「完成品だけでは見えない、努力やこだわりがあるんですね!」と驚かれます。
時には知人を介して海外から見学に訪れる方もいらっしゃり、手作業で進む下駄づくりの様子に感動され、「自分もやってみたい」とおっしゃる方もいました。
このようなお客様の純粋な反応に触れるたび、「ものづくりの裏側をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いが強くなりました。それは同時に、各地で存続の危機にある伝統産業や、後継者不足に悩む小さな工場を支える一助にもなるのではないかという希望にもつながったのです。
「守るために、門をひらき、つなげる」
私たちはこの想いを形にするため、数年前に工場のリノベーションを行いました。
お客様を気持ちよく迎えられる空間を目指すとともに、本業の合間を縫って少しずつ工房体験の受け入れ準備を進めています。
近年、海外からの旅行者の中には、一般的な“観光地めぐり”より“地域の人と触れ合う体験”を求める方が増えています。そんな方々に、静岡の地場産業や日本のものづくり文化を伝えることができたら――それがmizutoriにとって、そして静岡にとっても大きな財産になると感じています。
観光と産業をしっかりとつなぎ、地域とともにものづくりを未来へつないでいく。それこそが、mizutoriらしさ、水鳥工業らしさであると思っています。
【お知らせ】2025年10月17日(金)〜19日(日)、 静岡工場博覧会「ファクハク」が開催されます。 mizutoriでは、17日(金)に鼻緒生地や試作生地の残布でつくる、アップサイクルリースのワークショップを開催予定です。
現在ご予約承り中!ぜひ下記サイトより詳細をご覧いただきご参加ください!布を結ぶだけ!鼻緒生地の残布で作る色とりどりのアップサイクルリース作り|参加企業一覧|ファクハク・静岡工場博覧会
まだ始まったばかりの取り組みで、至らぬ点もあるかもしれませんが、 ぜひ足をお運びいただき、実際に“つくる”楽しさを体感してください。 体験後には皆さまの率直なご感想をお聞かせいただけたら嬉しいです。
次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十九話】
第十九話漆塗り下駄の擬人化!?
前回お話しした会津の坂本乙造商店とのコラボ商品、mizutoriの漆下駄。実はこの漆下駄には、ちょっとユニークな“もうひとつの顔”があるんです。
それは、漆下駄の擬人化です!
その名も 「水鳥ここん」。商品のカラー名(UR-01)から名付けられたキャラクターで、私たちは親しみを込めて「ここんちゃん」と呼んでいます。
「下駄屋がキャラクターを?」と驚かれる方もいるかもしれません。実はこの発想こそ、mizutoriの“新しい挑戦を楽しみたい”という気持ちから生まれたものでした。下駄という日本の履物文化に、あえて遊び心を吹き込む――そんな取り組みを通じて、多くの人に下駄の魅力を知っていただきたいと考えたのです。
学生との出会いから広がる物語
この漆下駄の擬人化プロジェクトは、宝塚大学とのご縁から始まりました。学生のみなさんと一緒に取り組むことで、私たちだけでは出会えなかった刺激や発想に触れることができました。「一緒に作り出す」ことの喜びや意義を強く感じられたのは、産学共同プロジェクトならではの収穫です。
2017年の展示会で初めてここんちゃんをお披露目したときには、「えっ、下駄にキャラが!?」と多くの方が立ち止まり、驚きながらも楽しそうにご覧くださいました。
キャラクターをきっかけにmizutoriを知り、遠方から静岡まで足を運んでくださったファンの方もいらっしゃいます。たったひとつの小さな試みが、人と人とをつなげてくれる――その手応えを実感しました。
これからの「ここんちゃん」と仲間たち
とはいえ、ここんちゃんの魅力をまだ十分に活かしきれているわけではありません。
これから再び命を吹き込み、mizutoriの一員として歩んでもらえることを期待しています。
コンシェルジュとしてお客様からのご相談にお答えしたり、静岡の伝統産業である下駄の物語を届けたり。かわいらしい姿を通じて、下駄の世界をもっと身近に感じていただけるようになるはずです。
さらに、ここんちゃんには姉妹たちも含め、すでに6人の仲間たちが生まれています。今後この7人が、それぞれに個性を持ちながら活躍の場を広げてくれるでしょう。
mizutoriの下駄やブランドの物語を、キャラクターたちが代弁し、ときには物語として紡いでいく――そんな未来を思い描いています。
mizutoriが大切にしているのは、「ものづくりの中に驚きと楽しさを添えること」。
ジュエリーのような漆下駄を発表したのも、その一例です。
「下駄ってこんなに可能性があるんだ」と驚き、楽しんでいただきたい。擬人化キャラクターもまた、そうした想いの延長線上にあります。
この挑戦をともに歩んでくださった宝塚大学には、感謝の気持ちでいっぱいです。
そしてこれから、「水鳥ここん」をはじめとするmizutoriのキャラクターたちがどんな物語を紡いでいくのか、ぜひ楽しみにしていてください。
次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十八話】
第十八話漆塗り下駄の誕生
皆さんは、mizutoriの商品にジュエリーのように美しい「漆塗りの下駄」があることをご存じでしょうか?これは会津若松市にある、老舗の漆メーカー・坂本乙造商店とのコラボレーションによって生まれた、私たちにとってとても特別な一足です。今回は、その誕生秘話をお届けします。
出会い
坂本乙造商店は1900年(明治33年)に創業。漆精製から工芸品、ファッション小物まで幅広く手がけ、伝統の技を現代の暮らしに活かし続けています。
私たちが坂本さんと出会ったのは東京の展示会でした。毎年出店ブースが近く、顔を合わせるうちに自然と交流が生まれました。
展示会で目にした自社ブランド「坂本これくしょん」のアクセサリー――木を土台にした軽やかさと、漆ならではの深く輝く色合い。どれも洗練されていて、思わず手に取り見入ってしまうほどでした。
多彩なデザインと繊細な塗りの技術に、私たちはすっかり魅了され、「坂本これくしょん」の大ファンになっていったのです。
憧れから共創へ
そんな尊敬と憧れの気持ちが大きくなるにつれ、「mizutoriの下駄にも、この美しい漆を施していただけたら…」という想いが胸に芽生えました。
けれど、それを口に出すことはなかなかできませんでした。どう思われるだろう、断られてしまったらどうしよう…そんな迷いや不安にとらわれながら、月日は過ぎていったのです。
それでも気持ちは年々高まり、ついに抑えきれなくなって会津を訪ねることにしました。勇気を出して胸の内をお話しすると、坂本社長は静かに「売り先のイメージはありますか?」と尋ねられました。
経営者として当然のご質問でした。けれど当時の私たちは、ただ「坂本さんと一緒にものづくりがしたい」という一心で、その先の具体的なプランを持ってはいなかったのです。
恥ずかしさと未熟さを痛感しながらも、この想いだけは伝えたい、と必死にこうお伝えしました。「とにかくお客様を驚かせたいんです。まだ誰も見たことがない、ジュエリーのような下駄を坂本さんと一緒に作りたいです。」
そんな私たちの拙さも含めて理解してくださった坂本社長は、おだやかにこう言ってくださいました。「わかったよ。mizutoriのフラッグシップになるような商品を作ろう。任せてね。」
今振り返っても、この無謀ともいえるお願いを広いお心で受け入れてくださったことには感謝しかありません。
宝石のような下駄
その後、私たちは下駄の台を会津に送り、サンプルが届く日を心待ちにしました。
そして迎えた日―― 箱を開けた瞬間、そこに現れたのは想像をはるかに超える一足でした。光の角度によって色合いが変化し、飾っておくだけでも心が弾むほど。鼻緒には蒔絵が施され、漆の奥深い美しさと匠の技が凝縮されていました。
「履くのがもったいない」と思えるほどの存在感。まさに宝石のように輝く下駄が誕生したのです。
坂本社長が「この技術はうちにしかできないから、模倣品の心配はない」と胸を張った言葉通り、唯一無二の逸品でした。
特別な一足として
こうして生まれた漆塗り下駄は、単なる履物を超えて、それぞれのお客様の人生の大切な場面に寄り添う存在となりました。舞台に立つ方にとっては、光を浴びて輝くステージ衣装の一部に。宿泊施設では、客室に置かれるだけで空間の品格を高める装飾品に。ある方にとっては、大切な人への一生に一度の贈り物に。またある方にとっては、自分自身を励ますためのご褒美の一足に。その役割は一人ひとり異なりますが、それぞれのお客様にとっての、特別な存在となっています。
まるで宝石箱を開けたときのようなあの感動を、これからも多くのお客様と分かち合えることを楽しみにしています。
次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十七話】
第十七話有名デザイナーとの奇跡の出会い
「Leading to new encounters(新たな出会いへと導く)」これはmizutori英語版のブランドコンセプトです。その言葉を象徴する出来事が、20年以上前にありました。
当時、先代社長は東京の百貨店で夏恒例の実演販売を行っていました。ある日、mizutoriの売場に一人の女性が立ち止まり、じっと商品を見つめたのち、こう声をかけてきました。「おじさん、下駄作れる?」顔を上げた先代の目に飛び込んできたのは、洗練された雰囲気のある女性。その人物は、世界的に有名なブライダルファッションデザイナーでした。
彼女の依頼は、ファッションショーでモデルが着用する特別な下駄。シックな黒塗りの台に、鼻緒は豪華な金襴の帯地を使ったものでした。ファッションの舞台とは無縁だった“下駄屋のおじさん”にとって、まさに想像を超える依頼です。
内心は驚きつつも、先代はいつもの調子で「できるよ!」と即答。こうして大役を引き受けることになり、知らせを聞いた工場は嬉しさとプレッシャーで大騒ぎになりました。送られてきた美しい帯地を前に、スタッフ一同はブライダルの華やかなドレスにふさわしい下駄を完成させようと、いつも以上に心を込めて製造に取り組みました。
特に工夫を凝らしたのは底材です。ステージでモデルが歩く際、木製履物特有の音が響いてショーの妨げにならないよう、通常よりクッション性の高い厚めのEVA素材を採用。こうして静かで快適に歩ける特別仕様の下駄が仕上がりました。
完成した下駄は、実際にファッションショーのランウェイを歩く衣装のひとつとして使用されました。
ショーには先代も招待され、mizutoriの下駄が世界的な舞台に立つ瞬間を、直接目にすることができたのです。
下駄がもたらしてくれた夢のようなご縁。この出来事は、先代にとっての自慢話のひとつであると同時に、「ご縁はどこでどう繋がるかわからない」ということを強く感じさせる象徴的なエピソードでもありました。mizutoriの下駄を作り始めてから、思いがけないご縁に何度も恵まれてきました。私たちが掲げる 「Leading to new encounters」 には、そんな実体験とともに、mizutoriを履いてお出かけになる皆さまにも、新しいご縁やワクワクする体験が訪れますように――そんな願いが込められています。次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十六話】
第十六話静岡茶の恵みを、足元に。KCW-22/茶の実の物語
今回は、静岡茶と地域のものづくりの思いが詰まった一足KCW-22/茶の実(hitete6.5)をご紹介いたします。
茶染めとの出会い
この商品は、鷲巣染物店5代目 鷲巣恭一郎さんとの出会いから始まりました。
鷲巣さんは、静岡の基幹産業である「お茶」の製造工程で廃棄される部分を使った「お茶染め」を研究し、お茶染め文化創出のために活動されている方で、「お茶染め」の第一人者として知られています。茶葉が持つタンニンなどの成分を利用し、化学染料では表現できない、奥行きのある柔らかな色合いと独特の風合いを持つ作品を制作されています。
モダンな色合いと型染めによる使いやすいデザインも勿論のこと、先人の知恵と伝統技術を応用し、どこまでも価値をつけ続けるものづくりが最大の特徴です。
商品制作から作品づくりなど、多くの人と関わりながら多方面からお茶染め文化の創出を目指している鷲巣さんの思いに共鳴し、mizutoriも下駄という形でその活動の一端を担いたいと考えました。
茶葉が織りなす色彩
KCW-22/茶の実の鼻緒表は、静岡茶の茶葉を使った「お茶染め」を施しています。
緑茶そのものは鮮やかな緑色ですが、茶染めを施すと深く温かみのある茶色に変化するのが特徴です。
この色合いは、夏だけでなく秋の装いにも自然に馴染み、足元から季節を感じさせてくれます。
鷲巣さんのお茶染めは、染料として使った後の茶殻は堆肥に加工され、畑へと循環。現在は、静岡のビール工場のモルト粕と合わせて土に還す取り組みも行われています。
履くことで、自然と地域の循環型のものづくりにも触れられる一足です。
プレゼントにも最適
KCW-22/茶の実は、普段のコーディネートにさりげなく取り入れるだけで、地域の物語を足元に添えられる商品です。幅広い層に好まれる色合いは、 自分用にはもちろん、日本のものづくりに想いを馳せていただける商品として、特別な方へのプレゼントにもおすすめです。
この秋、足元から静岡茶の深みと地域のサスティナブルなものづくりを贈ってみませんか?
<イベント情報>
静岡市丸子にある駿府の工房の匠宿 伝統工芸館にて、鷲巣さんの展示イベント「お茶染めWashizu.展 茶で染めゆく - 匠宿」が9月28日まで開催中です。
同じく、駿府の工房匠宿にある、ギャラリー Teto Teto - 匠宿では、mizutoriの商品もお取り扱い中!
鷲巣さんとのコラボレーションした下駄も、数量限定で販売中です。ここでしかお求めいただけない素敵な下駄に仕上がっています。ぜひ足を運んでみてください。
次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十五話】
第十五話下駄は「多様性」の履物!?
最近よく耳にする「多様性」という言葉。それは、違いを認め、互いを尊重しながら共に生きる、という素敵な願いが込められていますよね。実は、私たちmizutoriの下駄も、この“多様性”の考え方と深くつながっているんです。「一体どういうこと?」と、少しだけ不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。今日は、その魅力を少しだけ深く掘り下げてご紹介させていただきます。
唯一無二の物語を宿す、手作りの下駄
mizutoriの履物には、自然の恵みである天然木が使われています。木の幹の上の方、真ん中、そして根元…使用する部位によって、台の重さや硬さ、そして色合いは少しずつ異なります。左右の重さや色味、木目をできる限り揃えるよう努めていますが、自然素材ゆえ、全く同じものにはなりません。鼻緒(はなお)に使う布地も同じです。職人が生地から型を抜く際、柄の出方に配慮しますが、大きな図案の生地では、裁断する場所によって表情ががらりと変わることも。そして、mizutoriの下駄は、すべて職人の手作業によって一つずつ丁寧に作られています。たとえ熟練の職人が同じ足型・同じサイズで鼻緒をすげたとしても、そこにはそれぞれの職人の「個性」が息づき、わずかな違いが生まれるのです。そう、どんなに注意を払っても、この世に「全く同じ」mizutoriの下駄は存在しないのです。
違いこそが魅力。mizutoriは「一点物」の証
こうした一つひとつの「違い」は、決して欠点ではありません。むしろ、mizutoriが何よりも大切にしている、かけがえのない魅力だと考えています。機械で均一に作られる工業製品とは異なり、天然素材と職人の手から生まれる下駄には、それぞれに異なる個性と、温かみがあります。鼻緒の生地も、デザイナーや作家、織物工房など、「作り手の顔が見える」ものを多く採用しています。だからこそ、一つひとつの素材を無駄にせず、その良さを最大限に生かしきる、そんな思いを込めてモノづくりに向き合っているのです。あなたのもとへ届いた下駄に、もし色や柄、あるいはわずかな表情の違いを感じられたとしたら。それは、手作りだからこその「味わい」であり、あなたと下駄との「特別な出会い」の証。まさに唯一無二の「一点物」として、そのご縁を楽しんでいただけたら嬉しいです。
多様なスタイルに寄り添う、日本の履物
mizutoriの下駄の魅力は、そのデザイン性にも表れています。• 和装にはもちろん、デニムなどのカジュアルスタイルにもすんなり馴染む。• 時には、ワンピースやドレスと合わせても不思議と品良くまとまる。さまざまな好みや幅広いファッションスタイルに寄り添えるからこそ、mizutoriは現代の多様なライフスタイルに合った履物だと言えるでしょう。下駄は約二千年前に誕生して以来、時代ごとの環境や暮らしの変化に柔軟に適応し、形を変えながら、現代まで日本の履物文化として生き残ってきました。まさにこの長い歴史こそが、「変化を受け入れ、進化してきた履物」であることの証ではないでしょうか。
多様なスタイルに寄り添う、日本の履物
下駄の個性が生き生きと輝くのは、何を隠そう、下駄を履く私たち一人ひとりが「唯一無二」だから。
体形や足の形は、誰一人として全く同じではありません。同じサイズの下駄でも、足の幅、甲の高さ、指の長さなど、本当に千差万別ですよね。
「心地よさ」の感じ方も人それぞれ。だからこそ、少しずつ違う個性を持つmizutoriの下駄が、それぞれの足に不思議と馴染んでくれるのです。
違いがあるからこそ成り立つ関係――。下駄はとてもおおらかで、私たち一人ひとりの多様な個性を受け入れてくれる、そんな懐の深い履物だと感じています。
足元から「違い」を楽しもう!
mizutoriの下駄は、「みんな違って、みんないい」という言葉をそのまま形にしたような存在です。
ぜひ、足元から心も軽やかに、多様性を楽しむように下駄を気軽に取り入れていただければ幸いです。
次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十四話】
第十四話旅や散策に出かけたくなる季節に
大切な方への贈り物にも8月もあとわずか。暑さの中にも少しずつ秋の気配が感じられるようになり、朝夕の風にふっと涼しさを感じると、季節の移ろいを実感します。そろそろ旅や散策の計画を立てたくなる頃ではないでしょうか。夏の思い出を胸に、次の目的地を考える時間もまた、この季節の楽しみのひとつですね。
mizutoriの下駄と旅する楽しみ
mizutoriの下駄は、日常のお出かけから旅行まで、さまざまなシーンで活躍しています。足にしっかりフィットする形状で軽やかに歩け、クッション性のある鼻緒は長時間履いても足をやさしく包み込みます。街路樹の歩道や木漏れ日の小径をゆったり歩けば、自然と姿勢も心も上向きになり、目の前の景色がより印象的に映りますよ。和装はもちろん、洋服との相性も良いので、旅先でのカジュアルな装いやリゾートファッションにもバッチリ馴染みます。
旅行カバンに一足入れておくだけで、装いの幅が広がり、写真映えするコーディネートが完成します。
旅先で生まれる思いがけないご縁
先日、お客様からこんなエピソードをいただきました。「mizutoriの下駄は不思議とどこにいてもその音で履いている人を見つけられるんです。旅行先で偶然mizutoriを履いている方と出会い、下駄がきっかけで楽しくお話が弾みました。まさか旅先でこんなご縁をいただけるとは思わず、とても嬉しい気持ちになりました。」
下駄は足を支える道具であると同時に、思いがけない出会いや心温まる交流をもたらしてくれる存在にもなるのだなと、私たちも胸があたたかくなりました。旅の道すがら偶然が重なり、人と人とが自然に笑顔でつながる――そんな小さな奇跡も、mizutoriの下駄がそっと後押しできれば幸いです。
秋のお出かけをもっと心地よく
これから訪れる秋は、紅葉を楽しむ小旅行や、歴史ある街並みを歩く散策など、心豊かな時間を過ごせる絶好の季節です。冷たい空気の中に香る金木犀、夕暮れに染まる街の灯り…。季節の美しさを五感で味わうひとときに、mizutoriの下駄が寄り添います。
mizutoriの下駄を履けば、足取りが軽くなり、景色をより鮮やかに楽しめるはず。シンプルなコーディネートに彩りを添えたり、旅の写真に映える一足になったりと、旅をさらに特別なものにしてくれます。
「次の休日、どこへ出かけよう?」と考えるとき、ぜひmizutoriの下駄を思い出してみてください。足元からあなたの旅を心地よくサポートし、時には人と人とをつないでくれるラッキーアイテムになるかもしれません。
mizutoriとともに、心弾む秋のお出かけをお楽しみください。
次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十三話】
第十三話いつまでも自分らしく、アクティブに!
大切な方への贈り物にも来る9月15日(月・祝)は、敬老の日。「いつまでも若々しく、自分らしい毎日を楽しんでほしい」そんな想いを込めて、今年はmizutoriの下駄を贈りませんか。伝統が育んだ心地よさと現代的なデザインが融合した一足は、世代を問わず喜んでいただける特別な贈り物です。
一歩一歩が、足への優しさmizutoriの下駄は、見た目のおしゃれさだけでなく、履かれる方のことを考えて1点1点職人がお作りしています。下駄は構造上、鼻緒を足の指で挟むようにして歩くため、指先で地面をしっかりとらえた正しい歩行を促し、自然と爪先から足全体の筋肉運動が促進され、血行を良くしたり、姿勢を整えたりする効果が期待できると言われています。mizutoriは、日常のさまざまな場面で履き続けていただくことで、みなさまの“いきいきとした毎日”を、足元からサポートいたします。健康も、おしゃれも、どちらも大切に「下駄は夏しか履けないのでは?」と思っていませんか?そんなことはありません。mizutoriの下駄は、素足で心地よく履くのはもちろん、足袋ソックスや薄手の靴下と合わせることで、春や秋など、少し肌寒い日にも楽しむことができます。靴下の裏に滑り止めがついているものを選べば、さらに安心してお履きいただけます。その日の気分やファッションに合わせて、一年を通してさまざまなコーディネートをお楽しみいただけます。敬老の日に想いをこめた贈り物を「いつまでも自分らしく、アクティブな毎日を送りたい」という方へ、mizutoriの下駄はその方の願いに寄り添い、いつでも歩調、歩幅を合わせて伴走させていただきます。あなたの想いのこもった贈り物で、大切な方に笑顔と彩りあふれる毎日を届けませんか。次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十二話】
第十一話下駄のおじさん
今日は、mizutoriの“顔”として長年親しまれていた先代社長――通称「下駄のおじさん」のエピソードをお届けします。mizutoriのルーツを知ることで、今お届けしている下駄が、もっと身近に感じてもらえたら嬉しいです。
春から夏にかけての下駄の季節。先代は毎年、北海道から鹿児島まで、全国の百貨店で開催される職人展や浴衣フェアを飛び回っていました。銀座、梅田、天神…。どこへ行っても、作務衣姿に巾着ひとつ。そして誰にでも気取らず、方言まじりで接客するのが、先代のスタイル。その姿に、いつしかお客様からは「下駄のおじさん」と親しみを込めて呼ばれるようになりました。
少々ぶっきらぼうだけど、なんだか憎めない。思ったことをズバッと言うその性格に、驚かれる方もいたかもしれません。でも、そんな飾らない人柄こそが魅力で、催事が恒例になるにつれ、まるで親戚のおじさんに会いに来るように、顔を見せてくださる常連さんも増えていきました。
中には、差し入れを届けてくださる方、静岡の工房まで訪ねてきてくださる方、さらには、お中元やお歳暮を贈ってくださる方まで。
たとえば、足に合う下駄が見つからないお客様には、「ぴったりこないのは、あんたの足の形が悪いんだよ」と、ズバリ。でもすぐに、「安心しな。気持ちよく履けるようにしてやるよ!」と、頼もしく言い切るのです。これが先代なりの、絶妙な接客術だったのかもしれません。
その真っ直ぐな人柄と、自分の作る下駄への自信と深い愛情が、お客様の心をつかんでいったのだと思います。mizutoriは、そんな「下駄のおじさん」のあたたかく、親しみやすい空気感を、今も大切に守っています。時代とともに変化していくことはあっても、その根っこにある想いは、今も変わりません。
ですから足にお悩みがある方も、どうぞお気軽にご相談くださいね。「下駄のおじさん」のように、あなたにぴったりの一足を、お届けします。
今年の夏は足にぴったりフィットする、心地よいmizutoriの下駄を体験してみませんか?
次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十一話】
第十一話ブランドイメージの転機【後編】小さな町工場が見た、新しい景色
■ ブランドとしての覚醒
ひびのこづえさんと出会う以前、mizutoriはまだ「和工房みずとり」「げたのみずとり」として商品を展開しており、洋装にも合わせられるものの、まだまだ“和小物“というくくりでの下駄を作っていました。日々、お客様からのご要望に応える商品作りに取り組む中で、自分たちがどのようなブランドになっていきたいのかというビジョンは、まだ明確に描けていなかったように思います。そんな中でチャレンジした、デザイナーとの共創作業。困難な課題を乗り越えて、これまでにない製品を生み出すことができた結果、思いもよらない反応が届くようになりました。それまでご縁のなかったセレクトショップやインテリアショップなどで商品を取り扱っていただけるようになり、新たなお客様にmizutoriを知っていただける機会が増えたのです。
■ 広がる評価と確かな手応え
地元では「グッドデザインしずおか県知事賞」を受賞。その後も、雑誌『サライ』の「サライ大賞グランプリ」や、インターナショナル・ギフト・ショーでのコンテスト受賞など、さまざまな形で評価をいただきました。
一つの商品が世間の目を変える。静岡の小さな町工場でも、デザイナーとの出会いによってまったく違う景色を見ることができる。その実感とともに、「デザインの力」の大きさを再認識しました。〈ひのきのはきもの〉の登場によって、もともと製造していた下駄への注目も集まり、これまで以上に多くのお客様の目に留まるようになりました。そして、「町工場でも、デザイナーの要望に応える商品を作ることができる」という大きな自信が、私たちの中に育っていきました。
■ 未来へと続くmizutoriの挑戦
mizutoriの共創商品の第一作である〈ひのきのはきもの〉は、今でも大切に販売を続けています。これ以降、mizutoriは、デザイナーや作家、各地の伝統産業などと数多くの共創をしていくようになりました。
温故知新という言葉があります。私たちは困難に直面したことで下駄作りという原点に立ち返り、そこから再び新しい商品を生み出す機会を得ることができました。この経験を通じて、mizutoriは「チャレンジを続けるブランド」として、お客様に期待していただける存在へと成長できたのだと感じています。
これからも、歴史や伝統への敬意を忘れずに、日本の履物文化を未来につなげていく。そのためにも、恐れず新たな挑戦を重ねてまいります。どうかこれからもmizutoriを楽しみに、温かく見守り、応援していただけましたら幸いです。
次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第十話】
第十話ブランドイメージの転機【前編】ひのきのはきもの誕生秘話
■ 出会いから始まった、大きな挑戦
mizutoriでは、「茶人」「SHIKIBU」「two piece」をはじめ、静岡産ひのきの間伐材を活用した商品を展開しています。その先駆けとなったのが、コスチュームアーティスト・ひびのこづえさんデザインによる〈ひのきのはきもの〉シリーズでした。今から20年ほど前、静岡市では地場産業とデザイナーを結びつけて新たな商品開発をするプロジェクトがありました。そのプロジェクトに参加させていただいて出会ったのが、ひびのさんです。静岡県出身で、NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」の衣装・セットデザインを手がける著名な方にデザインをお願いできることになり、私たちは緊張と期待が入り混じった気持ちでスタートを切りました。
■ デザインと技術のせめぎ合い
mizutoriはそれまで、自社で商品の企画・製造を完結させていました。そのため、プロのデザイナーの要望に応えられるのかという不安がありました。実際いただいたデザイン画は、それまでの下駄とはまったく違う印象のもので、どれも洗練されており衝撃的でした。「木製履物」と聞いてイメージされる“下駄”とは一線を画すスタイリッシュな佇まいに期待感も高まりました。
けれども、そこに記されていたのは“図面”ではなく“絵”のみ。数値の指示がない中で絵を見て立体化し、履物として具現化していくというのは、私たちにとって初めての経験でした。履き心地を重視すればデザインが変わってしまう。かといってデザインに忠実すぎると、mizutoriが大切にしてきた「心地よさ」が損なわれてしまいます。素材もデザインイメージに近く、かつ、耐久性や肌触りといった実用性を兼ね備える必要がありました。
■ 職人技が生んだ奇跡の一足
Mizutoriではこのプロジェクトで初めて、天板に静岡ひのきの間伐材を使用しました。ただ、デザイン画通りの薄さでひのきを使用した場合、履いたときに割れてしまう可能性がありました。
そこで地元の家具加工業者に協力を仰ぎ、強度を確保するためにおよそ10mmの木板を半分近くにまで圧縮プレス。なんとか試行錯誤の末にデザイン通りに薄く、でも、実用的には強度のある天板が完成しました。さらに、履き心地を良くするため、足裏の曲線に沿うような“曲げ加工”も施しましたが、この工程が非常に難しく、木の表面にシワが出ないよう仕上げるのは至難の業。この加工は、偶然成功したと言ってもいいほど困難で、今でも同じ加工ができる工場はなかなかありません。そうして何度も試作を重ね、ようやくひびのさんも私たちも納得のいく商品が完成しました。
今思い返しても、あの開発の日々はまるで修行のようでした。しかしこの経験が、mizutori開発チームの「ネバーギブアップ精神」の礎になったことは間違いありません。こうして世に出た〈ひのきのはきもの〉は、mizutori――そして水鳥工業のイメージを大きく変える転機となったのです。
次回に続く
シリーズ「mizutori」とは... 【第九話】
第八話「下駄=痛い」…そのイメージ、mizutoriが変えます!
夏祭りや花火大会など、心が弾む季節がやってきました。浴衣や夏の装いにチャレンジしたいけれど、「足元はどうしよう?」と悩む方へ——。mizutoriの下駄は、洋装・和装どちらにもなじむデザインと、快適な履き心地が魅力。まるでサンダルのように気軽に履けて、普段の暮らしにも自然と溶け込みます。日本の伝統を日常で楽しめる、そんな一足です。
「下駄って、足が痛くなるのでは?」
——そんな不安を感じる方も少なくありません。mizutoriは、そうした声に真摯に向き合い、 “痛くなりにくい下駄”を目指して改良を重ねてきました。
▼ 痛くなりにくい5つの理由
1. 鼻緒が幅広・前つぼが太め足指で鼻緒を挟む「前つぼ」は、細いと圧が集中して痛みの原因に。mizutoriはこの部分を太めに設計し、さらに鼻緒全体を幅広にすることで、足への圧力を分散させています。
2. クッション入りの鼻緒mizutoriの鼻緒には、見えない部分にクッション材を内蔵。これにより足をふんわりと包み込むようなやさしい履き心地を実現しています。
3. 肌あたりのよい素材選び鼻緒の裏地など足に直接触れる部分には、長時間歩いても擦れにくいように柔らかく滑らかな素材を厳選しています。
4. 足へのなじみを考えた木台の形状mizutoriの下駄には、足のアーチに沿った立体的な彫りが施してあります。足裏がフィットし安定することで、歩きやすく疲れにくい設計になっています。
5. オーダーメイドの調整も可能既存サイズでは不安という方には、鼻緒のサイズ調整も対応しています。ご注文時にお知らせいただくことで、より快適な一足をお作りすることができます。
快適に履くためのひと工夫
とはいえ、足の形や皮膚のタイプ、気候などによっても履き心地は変わってくるので「絶対に痛くならない」とまでは言い切れません。
そんな方におすすめしたいのが、「ハーフソックス」の活用です。
鼻緒による擦れや痛みを予防できるうえ、汗汚れも防げて、衛生的。ソックスの色を変えることで、コーディネートのアクセントにもなります。
mizutoriウェブショップでは、「SASAWASHI 5本指ハーフソックス」も販売中。
くまざさを漉き込んだ和紙で織り上げたさらっとした肌ざわりを、ぜひ下駄と一緒に体験してみてください。
日本の夏を、mizutoriの下駄でもっとお洒落に、快適に!
涼やかで快適、そしてちょっと個性的。mizutoriの下駄とともに、日本の夏をもっと楽しんでみませんか?
次回に続く