第二十二話
下駄との付き合い方1「選ぶ・育てる」


mizutoriの下駄は「壊れたら終わり」の使い捨てではありません。mizutoriでは、変化を楽しみながら履き続けられる存在として、素材・構造・メンテナンスまで含めたものづくりをしています。

 

■「履きながら育てる」という考え方

mizutoriの下駄には、長く大切にしていただくための工夫があります。まず重視しているのが、素材選びと構造です。

主材として使っているのは、下駄材としては珍しいマホガニー。チークやウォルナットと並ぶ世界三大銘木のひとつに数えられます。木目の美しさだけでなく、加工の安定性や耐久性にも優れているため、高級家具や楽器の材料としても世界的に評価されています。



■「重さ」よりも「育つ楽しみ」

一般的な下駄材である桐や杉と比べると、確かに少し重さはあります。ただそれ以上に、長く使える丈夫さがあり、履き込むほど色が深まり、独特の光沢を帯びていく経年変化を味わえます。まさに“育てる履物”としての価値をもつ木です。

木である以上、ぶつければ傷もつきますし、欠けることもあります。それもまた「木製の履物」として自然に起こる当たり前のこと。mizutoriでは、そうした変化も前提にしています。

 

■現代の暮らしに合う底づくり

舗装されたアスファルトで歩く生活に合わせて、底にはゴムを張っています。足あたりをやわらげるため、あえてクッション性のある柔らかめの素材を採用。柔らかいぶん削れやすさはありますが、靴と同じ構造で作られているため、多くの靴修理店でも張り替えが可能です。気づいたときに気軽に交換できる安心感があります。

■「壊れない完璧な下駄」ではない

mizutoriが大切にしているのは、「壊れない製品を作ること」ではありません。「起こり得る変化も含めて付き合っていけるようにすること」です。

ご愛用者様の中には、「履き込むことで生まれた光沢や、自分だけのフィット感は、たとえキズや欠けがあっても手放せない」とおっしゃる方もたくさんいます。そうした想いに応えるため、修理を前提にした設計と体制を整えています。

 

次回は、その修理やメンテナンスの実情、そして“直しながら履く魅力”についてご紹介します。



次回に続く