第十一話
ブランドイメージの転機【後編】
小さな町工場が見た、新しい景色
■ ブランドとしての覚醒
ひびのこづえさんと出会う以前、mizutoriはまだ「和工房みずとり」「げたのみずとり」として商品を展開しており、洋装にも合わせられるものの、まだまだ“和小物“というくくりでの下駄を作っていました。
日々、お客様からのご要望に応える商品作りに取り組む中で、自分たちがどのようなブランドになっていきたいのかというビジョンは、まだ明確に描けていなかったように思います。
そんな中でチャレンジした、デザイナーとの共創作業。
困難な課題を乗り越えて、これまでにない製品を生み出すことができた結果、思いもよらない反応が届くようになりました。
それまでご縁のなかったセレクトショップやインテリアショップなどで商品を取り扱っていただけるようになり、新たなお客様にmizutoriを知っていただける機会が増えたのです。
■ 広がる評価と確かな手応え
地元では「グッドデザインしずおか県知事賞」を受賞。
その後も、雑誌『サライ』の「サライ大賞グランプリ」や、インターナショナル・ギフト・ショーでのコンテスト受賞など、さまざまな形で評価をいただきました。
一つの商品が世間の目を変える。
静岡の小さな町工場でも、デザイナーとの出会いによってまったく違う景色を見ることができる。その実感とともに、「デザインの力」の大きさを再認識しました。
〈ひのきのはきもの〉の登場によって、もともと製造していた下駄への注目も集まり、これまで以上に多くのお客様の目に留まるようになりました。
そして、「町工場でも、デザイナーの要望に応える商品を作ることができる」という大きな自信が、私たちの中に育っていきました。
■ 未来へと続くmizutoriの挑戦
mizutoriの共創商品の第一作である〈ひのきのはきもの〉は、今でも大切に販売を続けています。
これ以降、mizutoriは、デザイナーや作家、各地の伝統産業などと数多くの共創をしていくようになりました。
温故知新という言葉があります。
私たちは困難に直面したことで下駄作りという原点に立ち返り、そこから再び新しい商品を生み出す機会を得ることができました。
この経験を通じて、mizutoriは「チャレンジを続けるブランド」として、お客様に期待していただける存在へと成長できたのだと感じています。
これからも、歴史や伝統への敬意を忘れずに、日本の履物文化を未来につなげていく。
そのためにも、恐れず新たな挑戦を重ねてまいります。
どうかこれからもmizutoriを楽しみに、温かく見守り、応援していただけましたら幸いです。
次回に続く