第五話
「ジーンズに合う下駄」
一足の下駄に込められた、私たちの原点。
今では100種類以上の彩り豊かな鼻緒から、お好きな一足を選んでいただけるようになったmizutoriの下駄ですが、
今回は、その原点となった『げた物語』の最初の一足が、どのような想いから生まれたのかをお話しさせていただきます。
『げた物語』の発売当初、商品数はほんのわずかでした。
その開発の核にあったのは、先代社長の「老若男女、誰もが履いているジーンズに合うような下駄を作りたい」という、強い想いだったのです。
昭和19年生まれの先代にとって、ジーンズは「現代的でお洒落の象徴」そのものでした。そのジーンズに、日本の伝統的な履物である下駄を合わせるという、新しいスタイルを提案したかったのです。

当時の先代は、催事でお客様にお会いするたびに、嬉しそうにこう語りかけていました。
「この下駄はね、ジーンズにとても良く合うんだよ!」
その言葉には、新しいライフスタイルへの自信と、ものづくりへの深い愛情が込められていました。
その想いを形にするため、デザインにも工夫を凝らしました。ジーンズの定番カラーであるネイビーに美しく映えるよう、鼻緒は濃紺をベースに。石川県の織屋さんへ特注の生地をオーダーし、麻の葉や青海波といった日本の伝統柄をあしらいました。
ちなみに、当時は現在のブランド名「mizutori」ではなく、温かみが感じられる「和工房みずとり」でした。
そして、この「和工房みずとり」と「げた物語」のロゴは、書道の先生だった現社長の祖父が筆を執ってくれたものです。
先代の情熱と、それを支える家族の絆。『げた物語』は、家族全員の力で生み出した思い入れ深い一足です。
発売から約30年、この『げた物語』が皆さまに長く愛され続けていることは私たちの誇りです。
今では和柄に限らず、様々なファッションに合わせていただけるようデザインも豊富になりました。
これからも、この始まりの想いを大切に受け継ぎながら、皆さまの毎日に寄り添う一足を、心を込めてお届けしてまいります。
お手持ちのジーンズとmizutoriの下駄で、この夏は新しいお洒落をぜひお楽しみください。

次回に続く