第五十五話
温故知新 ―試作の山は宝の山?―
工場には、
たくさんの試作品があります。
新しい商品を考えるたびに、
試作品をつくります。
鼻緒の色を変えたり、
形を変えたり、
素材を変えたり。
一度で思い通りのものができることは、
ほとんどありません。
少し変えては試し、
また少し変えては試す。
そんなことを繰り返しながら、
商品は形になっていきます。
そして商品になるものもあれば、
商品にならないまま終わるものもあります。
そのため工場には、
試作品や型紙が少しずつ増え続けています。
正直に言うと、
置き場所には困っています。
「もう使わないなら捨てればいいのでは」
と思われるかもしれません。
けれど私たちにとって、
試作品は簡単に捨てられるものではありません。
なぜなら、
それらはmizutoriが積み重ねてきた
歴史であり財産だからです。
何十年も前につくった台を
引っ張り出してきて、
新しい商品のヒントにすることもあります。
昔の配色から学ぶこともありますし、
技術的な工夫が
参考になることもあります。
今考えていることを、
実は何年も前に
誰かが試していた。
そんなことも
珍しくありません。
そして過去をたどると、
「なぜ商品化しなかったのか」
という理由が見えてきます。
当時は時代が早すぎたのかもしれません。
材料がなかったのかもしれません。
技術的に難しかったのかもしれません。
あるいは、
その時は必要とされなかっただけで、
今なら形にできることもあります。
過去を知ることで、
今やるべきことが
見えてくることがあります。
だから昔から、
「試作品と型紙は必ず残しておけ」
と言われてきました。
実際に工場には、
ずいぶん前につくられた試作品や型紙が
今もたくさん残っています。
品質にまったく問題のない試作品は、
静岡市にある専務の店「縁Joy」で、
限定品として販売することもあります。
もし静岡へお越しいただく機会があれば、
カタログには載っていない
一点物の鼻緒の下駄や、
少し変わったデザインの下駄に
出会えるかもしれません。
とはいえ、
現実はなかなか大変です。
すぐ見られる場所に置きたい。
けれど普段は使わない。
奥にしまうと、
今度は存在を忘れてしまう。
工場の中では、
長年そんなことを繰り返しています。
試作品専用の棚をつくり、
きちんと整理したい。
それは叶えたい目標のひとつです。
けれど毎日の仕事に追われ、
なかなか手が付けられていません。
家の片付けと同じで、
「今やった方がいい」
ことは分かっているのですが、
現実には難しいものです。
それでも、
いつかきちんと整理して、
試作品たちにも活躍の場をつくってあげたいと思っています。
将来的に工場見学や体験工房など、
もっと多くの方をお迎えできる場所にできたら、
きっとそこでも一役買ってくれるはずです。
商品にはならなかったけれど、
そこにはたくさんの挑戦があります。
成功も失敗も含めて、
mizutoriの歴史です。
だから私たちは、
それらを大切に残しています。
いつか工場見学にお越しいただいた時、
商品にならなかった試作品たちの中にも、
次の商品へとつながるヒントを
見つけていただけるかもしれません。













