第四十五話
こどもと下駄
下駄をつくっている環境にいることもあり、
我が子や姪は、幼稚園に入る頃には
自然と下駄を履くようになっていました。
周りの大人が当たり前のように履いているのを見ていたからか、
はじめてでも迷うことなく、
親指と人差し指で鼻緒を挟み、
すんなりと歩き出していたのが印象に残っています。
店頭に立っていると、
お子さんに下駄を履かせてみたいと
ご家族で来店される方もいらっしゃいます。

木の履物に触れさせたいという想いや、
足の使い方を大切にしたいという考えから、
関心を持たれている方も増えているように感じます。
ただ一方で、
足の指を開くこと自体に慣れておらず、
どう動かしてよいか分からない様子のお子さんに
出会うこともあります。
足指がうまく開かず、
ぎゅっと握ったままの状態では、
鼻緒を挟むこと自体が難しくなります。
そのまま何とか履かせようと、
無理に指を広げて下駄に入れようとすると、
かえって違和感や不安が強くなり、
「履きたくない」という気持ちにつながってしまうこともあります。
こどもは、
大人の姿をよく見ていますから、
無理に教え込まなくても、
日々の中で大人が下駄を履いていれば
自然と履き方を覚えていきます。
そして一度、
下駄で歩くことに慣れると、
多くのお子さんは、自分から進んで下駄を選ぶようになります。
玄関に並んでいる履物の中でも、
さっと履いて出かけられる手軽さ。
肌に触れる天然木のやさしい感触や、
走り出したときの軽やかな音。
そうしたものが、
こどもにとっての楽しさにつながっているのかもしれません。
中には、下駄台が薄くなるまで履き続けてくださったり、
サイズアウトのタイミングでメンテナンスをして、
弟や妹に譲ってあげたりと、
本当に下駄を好きになって履いてくれるお子さんが多いと感じます。
小さい頃の足の使い方は、
日々の積み重ねの中で
少しずつ身についていくものだと感じています。
こどもの履物は、成長を考えて
実寸より大きめを選ぶ方が多いかと思います。
それでも脱げないように甲のベルトで固定すれば、
違和感なく履けてしまうため、一見問題はないようにも感じます。
けれどその一方で、
足指が浮いた状態のままで歩いていたり、
指をあまり使わない歩き方が習慣になってしまうこともあるでしょう。
だからこそ、
幼稚園や学校に下駄を履いていくことは難しくても、
休日のようなゆったりとした時間の中で、
足の裏や指先の感覚に目を向ける機会を持つことは、
歩き方を見直すひとつのきっかけになるのではないでしょうか。
下駄は、
足の指を使いながら歩く履物です。
無理のない範囲で取り入れていただくことで、
普段とは少し違った歩き方に心地よさを感じたり、
足の指や筋力を使う感覚に気づいていくこともあります。
成長の途中にあるこどもたちにとっても、
そしてもちろん大人にとっても、
足元に意識を向けた歩き方をすることは、
日々の中での小さな変化につながっていくように思います。
履物を選ぶとき、
見た目や軽さだけでなく、
どのように歩くかという視点を少し加えてみる。
そんなとき、
mizutoriの下駄が
そっと寄り添う存在になれば嬉しいです。













