第三十九話
100歳の自分へ ― 生涯、歩き続けるための履物 ―

店頭でmizutoriの下駄を手に取られた方が、
試すことなく、
そのまま棚へお戻しになることがあります。
「少し重いですね」
そうお感じになり、
試すのをためらわれることがあるのです。
感じ方はそれぞれ違いますので、
仕方のないことかもしれません。

ただ、作り手にとって、
一番お伝えしたい魅力をまだお見せできていないような、
少しもどかしい瞬間でもあります。
mizutoriの下駄は、
見た目や手にした印象だけではなく、
足を入れて歩いたときに、
はじめて本来の良さが伝わる履物です。
足をのせる天板は、
足裏のカーブに沿うように、
ゆるやかに彫り込んでいます。
さらに、
少し太めに設計された鼻緒が、
足をやさしく包み込み、
歩行をしっかりと支えてくれます。
mizutoriが追究してきたこの形が、
他にはない心地よさを、生み出しているのです。
足を入れた瞬間、
ぴたっと収まり、
足と台座の間の余白がすっと消えていくように感じます。
歩くとき、
鼻緒を足指で挟むことに意識を向け、
台座を持ち上げるような気持ちで歩いてみてください。
すると、
下駄が足裏に吸い付くようにフィットし、
足と一体になったような感覚が生まれます。

無理に力を入れる必要はありません。
少し意識を向けるだけで
自然に足指が動き、
足全体で歩いていると実感できるようになります。
鼻緒のある履物に対して、
「痛くなりそう…」と、不安を抱く方もいらっしゃるでしょう。
mizutoriの下駄は、
そうしたお声をきっかけに、
心地よさはもちろんのこと、
日常の中でオシャレを楽しむアイテムとして、
気軽に履いていただけることを目指して誕生しました。
履き心地とデザイン性の両方を大切にすること。
それが、mizutoriのものづくりの原点であり、
いまも変わらず大切にしている姿勢です。
実際に履かれると、
「思っていたより軽く感じますね」
とおっしゃる方が多いのも興味深いことです。
それは、
重さが変わるのではなく、
足にきちんと添うことで、
足本来の動きで、無理なく歩けているからです。
鼻緒のある履物は、
足指を自然に使うことにつながると、
身体の専門家の方々からも語られています。
足指を使い、
足全体の筋肉に働きかけながら歩く。
下駄は、
そんな歩き方を、
思い出させてくれる履物でもあります。
この履き心地を実現するために、
もうひとつ大切なことがあります。
それは、
足に合ったサイズを選ぶことです。
スニーカーなどの足を覆う履物は、
実際の足の長さより大きめでも、
紐で甲を固定することで歩くことができます。
けれどmizutoriの下駄は、
足そのものに寄り添う履物です。
大きすぎず、小さすぎず、
自分の足の実寸に一番近いサイズを選ぶことで、
本来の履き心地が最大限に生かされます。
人生100年時代と言われる今、
これから先も、
ご自身の足で歩き続けていくことは、
何より守りたい
大切なことのひとつではないでしょうか。

私たちは、
特別な機能を足すことよりも、
足が本来持っている力を、
日常生活の中で引き出しながら、
生涯、歩き続けることを支える存在でありたいと思っています。
履くたびに、
自分の足で歩いていることを、
自然と思い出させてくれる下駄。
mizutoriが、
皆さまの未来の歩みのために、
これからも伴走させていただけるのなら、
これほど嬉しいことはありません。
mizutoriの心地よさを、
より多くの方に、体感していただけることを願っています。
次回に続く