第三十七話
mizutoriのアイデンティティとは?

今さらながら、
迷うことがあります。
mizutoriとして、
何を大切にし続けるのか。
そして、
お客様は、
mizutoriに何を求めてくださっているのか…。
ものづくりにおける材料価格は、
年々確実に上がり続けています。
下駄づくりに関わるものも、
例外ではありません。

mizutoriでも、
価格改定を考えざるを得ない状況が、
現実として見えてきています。
それでも、
できる限り、
これまでと同じ価格で
お届けできないか。
現場でも、
机の上でも、
その方法を探し続けています。
その一方で、
既存の商品とは別に、
もう少し手に取っていただきやすい価格帯の
商品開発も続けています。
mizutoriの商品は、
天然素材と、
人の手による工程で成り立っています。
だからこそ、
価格を下げるために
できることには、
どうしても限りがあります。
何を削るのか。
そして、
必ず守らなければならないものは何なのか。
履物としての履き心地。
日常に取り入れやすいデザイン。
新しいことに挑戦する姿勢。
周囲と連携して続くものづくり。
考え続ける中で、
あらためて
「木」という素材に目が向きました。

木には、
スニーカーや革靴にはない、
独特の感触があります。
季節によって変わる温もり。
履く人の時間とともに変わっていく表情。
一方で、
天然素材を使うということは、
手間やロスを生むこともあります。
もし、
木を使うという前提を
一度外してみたらどうなるのか。
最初は、
どこかに木を残そうと思っていました。
けれど最終的に、
天然木をまったく使わない履物の
試作に至りました。
先日開催された展示会で試験的に展示し、
mizutoriをよく知ってくださっているお客様に
ご意見を伺いました。
その中で、
とても印象に残った言葉がありました。
「これは、mizutoriが作らなくてもいいよね」
履物としては、
自然に受け入れられる。
けれど、
mizutoriらしさは感じない。
そんな意味だったのだと思います。

既存品と比べても
履き心地はいいですし、
価格だけを考えれば、
あってもいい選択肢かもしれません。
けれど、
mizutoriに期待されていることとは、
少し違っていました。
その言葉を聞いたとき、
正直に言えば、
迷いはむしろ深くなりました。
でも、大切なことを教えていただいたようで、
同時に、うれしくも感じました。
お客様の中に、
確かに
mizutoriに求めてくださっているものがある。
それに応えたい。
そう思う気持ちは、
以前よりも、少し強くなった気がします。
簡単な道ではありません。
それでも、
mizutoriの個性やアイデンティティを守りながら、
さらにその先へ進めるものを
探し続けていきたい。
変わらないために、
変わり続けること。
その両方を抱えながら、
一足一足、
mizutoriとしての答えを探しながら、
つくり続けていきたいと思っています。
次回に続く