第二十四話
“つくる手”を未来へ――mizutoriのものづくりを支える人たち

mizutoriの下駄づくりは、ひとつの工場の中だけで完結するものではありません。
木工加工・塗装・鼻緒加工・底材加工——それぞれの専門職が携わる“分業の文化”によって支えられています。
それぞれの現場には、長年の経験で培われた技と勘が息づき、
見えないところでひとつの製品を形づくっています。
けれど今、その“手”が少しずつ減っています。
技を継ぐ人がいない。教えたいと思っても、
生活の基盤が整わなければ続けていくことが難しい。
そんな現実の中で、mizutoriもものづくりの未来に向き合っています。
私たちが大切にしているのは、ただ製品をつくることではありません。
下駄という文化を今の暮らしにつなげていくこと——。
そのためには、つくる人が安心して働ける環境を守る必要があります。
たとえば、量産品との違いをきちんと伝えること。
mizutoriでは、積極的なコラボレーションや
こうした発信を通じて、手間を惜しまないものづくりの魅力を
知ってもらう活動を続けています。
そして、手間に見合った適正な価格で販売を続けていくこと。
それは、つくる人たちの誇りを守ることでもあります。
実際の製造現場は、華やかさとは無縁です。
どうすれば品質を保ちながら、より効率的に進められるか——
日々、試行錯誤を重ねる地道な仕事です。
それでも、自分の手で商品を生み出し、
誰かの暮らしに寄り添うものをつくる。
その確かな手応えが、この仕事の何よりのやりがいです。
mizutoriでも、次の世代の“つくり手”を迎える準備が急がれています。
決して楽な仕事ではありません。
ですが、探求心を持ち、ものづくりの苦労すらも楽しめる方にこそ、
この世界に飛び込んでほしいと願っています。
自分たちの一つひとつの行動が、地域産業を支えているという誇り。
その想いが、今のmizutoriを、そして日本のものづくり文化を支えています。
商品の背景にある物語や文化に価値を感じてくださる方がいるかぎり、
mizutoriは、この日本のものづくりを静かに、丁寧につないでいきます。

次回に続く