第二十話
見せる工場、つなぐ未来。
日頃よりmizutoriの下駄をご愛顧くださっているお客様の中には、「実際に製造現場を見てみたい」とおっしゃる方が少なくありません。
ものづくりへの興味、足の悩みを職人に直接見てほしいという切実な想い、「せっかく静岡に来たから」と足を運んでくださるお気持ち――お客様の目的は本当にさまざまです。
その温かいお気持ちをいただくたび、私たちは大変嬉しく、身が引き締まる思いでおりました。
一方で、長年の課題もありました。
私たちの工場は、何十年も前に建てられた古い町工場。もともと来客を想定した造りではないため、お客様が来られる際には急いで片付けをし、なんとか見学スペースをご用意していました。遠方からお越しくださる方もいらっしゃる中で、十分なおもてなしができず、毎回心苦しく思っていたのです。
職人の技が伝える、ものづくりの真価
そんな中でも、ご見学いただいたお客様からは、共通した驚きの声が寄せられます。
mizutoriの工場で行うのは、履き心地の要となる“組み立て工程”。
静岡のものづくりは昔から分業制のため、mizutoriの工場ではこの工程がメインです。
見学はおよそ30分ほどですが、多くのお客様が「こんなに丁寧に手作業でつくられているなんて!」「完成品だけでは見えない、努力やこだわりがあるんですね!」と驚かれます。
時には知人を介して海外から見学に訪れる方もいらっしゃり、手作業で進む下駄づくりの様子に感動され、「自分もやってみたい」とおっしゃる方もいました。
このようなお客様の純粋な反応に触れるたび、「ものづくりの裏側をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いが強くなりました。それは同時に、各地で存続の危機にある伝統産業や、後継者不足に悩む小さな工場を支える一助にもなるのではないかという希望にもつながったのです。
「守るために、門をひらき、つなげる」
私たちはこの想いを形にするため、数年前に工場のリノベーションを行いました。
お客様を気持ちよく迎えられる空間を目指すとともに、本業の合間を縫って少しずつ工房体験の受け入れ準備を進めています。
近年、海外からの旅行者の中には、一般的な“観光地めぐり”より“地域の人と触れ合う体験”を求める方が増えています。そんな方々に、静岡の地場産業や日本のものづくり文化を伝えることができたら――それがmizutoriにとって、そして静岡にとっても大きな財産になると感じています。
観光と産業をしっかりとつなぎ、地域とともにものづくりを未来へつないでいく。それこそが、mizutoriらしさ、水鳥工業らしさであると思っています。
【お知らせ】
2025年10月17日(金)〜19日(日)、 静岡工場博覧会「ファクハク」が開催されます。
mizutoriでは、17日(金)に鼻緒生地や試作生地の残布でつくる、アップサイクルリースのワークショップを開催予定です。
現在ご予約承り中!
ぜひ下記サイトより詳細をご覧いただきご参加ください!
布を結ぶだけ!鼻緒生地の残布で作る色とりどりのアップサイクルリース作り|参加企業一覧|ファクハク・静岡工場博覧会
まだ始まったばかりの取り組みで、至らぬ点もあるかもしれませんが、 ぜひ足をお運びいただき、実際に“つくる”楽しさを体感してください。
体験後には皆さまの率直なご感想をお聞かせいただけたら嬉しいです。
次回に続く