第五十一話
もし下駄屋に生まれていなかったら
地場産業である履物工場に生まれ、
ずっとこの仕事を見て育ち、
今では三代目という立場になりました。
けれど時々、
ふと不思議に思うことがあります。
もし自分がまったく違う環境で
生まれ育っていたとしても、
私は日常で下駄を履いていただろうか、と。
そもそも私は、
下駄を履くことが特別ではない環境で育ちました。
家族が履いていて、
工場があって、
その風景がずっと身近にありました。
だからきっと、
なんの躊躇も疑問もなく、
下駄を履いてきたのだと思います。
(写真は水鳥工業2代目の父_足元は「茶人」)
代々、
心地よい履物づくりにこだわってきたこともあり、
mizutori下駄の心地よさを
もっと多くの方に知っていただきたいという思いも、
気づけば自然と自分の中にありました。
けれどもし、
まったく違う人生だったら。
履物に、
ここまでこだわりを持っただろうか。
下駄に、
ここまで興味を持っただろうか。
これは今の自分には、
きっと分からないことです。
ただ、
だからこそ考えることがあります。
もし下駄に対する思いがゼロ、
いや、もっと言えば、
人生の中で「下駄」を考えたことすらない方なら、
どういう経緯で興味を持つことになるのだろうか、と。
出会う機会がなければ、
きっと、一生mizutoriに辿り着くことはないでしょう。
それは、
百貨店の催事かもしれませんし、
SNSで偶然見かけることかもしれません。
誰かからの紹介かもしれませんし、
それぞれに違った出会いの瞬間があるはずです。
実際にご購入いただいた方が、
どんなきっかけで出会い、
どんな思いで購入されたかを
教えてくださることがあります。
その中で驚いたのが、
旅先で偶然、
mizutoriを履いている方を見かけて、
「あれはどこの下駄だろう」と気になり、
探してくださった方がいたことでした。
そんな出会い方もあるんだ、と
嬉しさを超えて感激しました。
そしてもうひとつ、
興味深いと感じることがあります。
最初に出会ってから、
すぐに購入ではなく、
数年越しに選んでくださる方が
とても多いことです。
「2〜3年悩みました」
という方もいれば、
「10年前から気になっていて、
やっと今年買えました」
という方もいらっしゃいます。
こうしたお話を聞くたび、
下駄は一般的にはまだ、
特別な履物なのだと感じます。
その距離を少しずつ近づけていくことが、
もっと日常に寄り添うための鍵なのかもしれません。
だからこれからも、
いろいろな形で発信を続けていきたいと思っています。
そして皆さまの声は、
mizutoriが成長していくための
大切な気づきです。
どんなきっかけで出会ったのか、
どんな思いで選んでくださったのか。
そんなお話も、
私たちにとって大切な宝物です。
ウェブショップでは、
レビューを書いていただけるようになりましたので、
よろしければ、
率直なお声を聞かせていただけたら嬉しいです。













