第三十四話
海を越えて届くもの

 

mizutoriには、

時々、海外からも商品についてのお問い合わせをいただきます。

 

現在は自社のオンラインショップで海外配送にも対応していますが、

十数年前までは、突然いただく一通のメールから、

海の向こうのお客様とのやり取りが始まりました。

 

『下駄が欲しい』ということだけはわかる、

翻訳機を使った少しぎこちない日本語でのメッセージ。

あるいは、自国語で書かれた文章。

 

私たちも翻訳機を駆使しながら、

どうにかお気持ちをくみとってこちらもぎこちない英語でご返信していました。

 

そうしたやり取りの中で、

海外のお客様から修理についてのお問い合わせをいただくこともありました。

 

日本まで送るのは大変なので、

自分で直す方法を教えてほしい、という内容です。

 

外国のホームセンターでも手に入りそうな道具を思い浮かべながら、

簡単な修理方法を文章でお伝えしていました。

 

どの方も、

直しながら大切に履き続けたい、

という想いでとても熱心に聞いてくださいました。

 

その想いに応えたい一心で、私たちもお返事を書いていました。

 

きちんと伝えたいと思うほど、

言葉の壁を強く感じ、

気がつけばプライベートでも英語を勉強するようになっていました。

 

木の履物文化がない国の方にも、下駄が受け入れられていること。

それは驚きであると同時に、素直に嬉しい出来事でした。

 世界のどこかで、

静岡のこの町工場で作った下駄が履かれている。

そう思うと、今でも少し不思議な気持ちになります。

 

最近では、観光で日本を訪れた方がお土産として

mizutoriの下駄を選んでくださることも増えてきました。

 

宿泊先で館内履きとして使った方が、

履き心地を気に入り、コンシェルジュを通じて購入したいと連絡をくださる。

 

催事で試着し、
「家族や友人にも履いてほしい」とまとめてお土産用に選んでくださる。

 

きっかけはどれも偶然の出会い。

その小さな機会をとおして世界各国の方々の目にふれ、mizutoriが海を越えていく。

 感慨深いものがあります。

こうして改めて考えてみると、

mizutoriの商品を世界でいちばん多くコレクションしてくださっているのは、

ドイツにお住まいのあるお客様かもしれません。

 

新作やトライアル商品が出るたびにSNSでチェックしてくださり、

その都度ご連絡をくださるので、

気がつけば、とてもレアな一足までお持ちくださっています。

 

国が変われば、足の形も、履き方の感覚も違います。

さまざまなハードルがある中で、それでもどこか交わるところがあり、

mizutoriの下駄を欲しいと思っていただけることに、心から感謝しています。

 

これからも、

海外の方々から「mizutori=下駄」とイメージしていただけることを目指し、

一足一足に込めた想いを、海の向こうへ届けていきたいと思います。



次回に続く